オムロンがユーザーと共に実現する新たなサービスづくり ~カーボンニュートラル実現に向け、環境価値を創出する「みんなでつくるエコ活サークル」~

カーボンニュートラル社会の実現に向けて、企業・自治体は脱炭素への取り組みを進めています。しかし、多くの企業では、自社の省エネや再エネの取り組みだけでは目標達成が難しく、大きな経営課題となっています。太陽光発電用パワーコンディショナや蓄電システムなどを提供し、再生可能エネルギーの普及に貢献してきたオムロン ソーシアルソリューションズ(以下、OSS)は、2022年1月、家庭で埋没していた価値を環境価値に変え、企業のカーボンオフセットに貢献する新たなサービス「みんなでつくるエコ活サークル」(以下、エコ活サークル)の提供を開始。OSSの新たな価値の創出で社会を動かす、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みが始まりました。

 

ユーザーとつながるサービスの創出へ

太陽光で発電した電気をそのまま消費すること(自家消費)はCO2削減効果があるにも関わらず、その価値を認識されずに見過ごされてきました。「私たちの製品が生み出している価値を何とかカタチにできないか」、OSSは今まで見過ごされてきた埋没価値を環境価値に変え、カーボンニュートラル実現に貢献するサービスづくりに取り組みました。

そして、OSSでは今まで感じていた課題の解決にも取り組むことにしました。それは、エンドユーザーに製品を直接販売していないOSSにとって、実際に製品をお使いいただいているユーザーの声を集める手段が限られていたことです。サービス開発当時、OSSエネルギーソリューション事業の中で、新サービスの開発とその運用管理を行っている創発戦略部では、再生可能エネルギーの一層の普及に向け、ユーザーとのコミュニケーションを高める新しいサービスの開発に取り組んでいました。サービス運営に携わる神林祥子はサービス開発の背景について、次のように語っています。「今まで私たちは製品を通じて再生可能エネルギーの普及に貢献してきましたが、ユーザーとの距離を感じていました。今後、さらなる普及のために、実際に私たちの製品を利用いただいているユーザーとつながり、その声を活かすためのサービスが必要と考えていました」。

OSSはエネルギー事業で30年以上の歴史をもち、今では多くのユーザーに当社製の太陽光発電用パワーコンディショナや蓄電システムを利用いただいています。このユーザーと共に、カーボンニュートラル実現を目指すオムロンが活躍できるサービスをつくりたい、その想いが「エコ活サークル」の実現につながりました。神林とサービスを推進している内藤慎次は、サービス創出に向けた想いを語ります。「ユーザーに対して一方的に提供するものではなく、オムロンとユーザーがサークルのようにつながり、それが社会を動かす力となり、よりよい社会をつくっていくことができるサービスづくりを目指しました」。

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J-クレジット制度を活用して埋没価値を環境価値に

まずオムロンが着目したのは、カーボンニュートラル実現に向け、国が推進するJ-クレジット制度。再生可能エネルギー設備導入や植林・間伐による森林管理など、温室効果ガス削減の取り組みとして認められれば、その価値をクレジットとして認定され、それを企業のカーボンオフセットなどの様々な用途に活用できる仕組みです。この制度を活用し、今までは見過ごされてきた家庭内での太陽光で発電した電力の自家消費量を、環境価値に変えることができるのです。OSSはこの制度を活用し、個人ではその管理の手間と申請の複雑さから放置されていた価値を、新たな環境価値へと変える仕組みづくりに挑戦しました。

サービス設計においては、ユーザーに手間をかけることなく自家消費データを自動で収集し、クレジットに変換し、環境価値として活用することでユーザーに還元する仕組みが必要でした。一方で、ユーザーに還元するためには、生まれた環境価値を経済価値に変える仕組みも必要です。

そこでOSSは、今まで長年にわたり敷き詰めてきたエネルギー商品のノウハウとインフラを活かし、数万にも及ぶオムロン製の蓄電システムからデータを集めて束ねる仕組みを整えました。そして、今まで個人ではその手間に見合うリターンが得られず見過ごされてきた価値を大きな価値に変え、ユーザーへポイントとして還元するサービスができたのです。また、クレジットは、RE100SBTなどのイニシアチブでの再エネ調達量として報告することができ、企業は省エネ・創エネを実施しても達成できない部分をクレジットとして活用することで、環境経営を推進することができます。

2022年1月、オムロンとユーザーがつながり新たな環境価値を生み出すサービスのユーザー申し込みが始まりました。

*J-クレジット制度:再生可能エネルギー設備・省エネルギー機器導入や森林経営などの取り組みによる、CO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する制度

695_3.jpg「みんなでつくるエコ活サークル」のしくみ

 

ユーザーの環境意識を促して共感の輪へ

しかし、サービス開始当初、加入者数は伸び悩み、数カ月がたっても累計で数百件にも届きませんでした。内藤は当時のことを振り返ります。「加入に向け、様々なプロモーションを行いましたが、オムロン視点だったと思います。ユーザー視点に立ったアプローチが必要と気づきました」。そこで、メンバーは、ユーザーの理解と参画を促すために、まずはユーザー自身が環境活動に取り組んでいることへの意識醸成に取り組みました。再生可能エネルギーでの環境に優しい暮らしや家庭での行動がカーボンニュートラル社会実現につながっていることをユーザー自身が実感できる場づくりを心がけたのです。一方、社内プロジェクトチームを編成し、今までの一人一人が個々のタスクをこなす体制から、状況の変化に応じて主体的に判断・行動し、またお互いにサポートができる体制へと変えました。ユーザーとオムロンが一緒につくるサービスのコンセプトに立ち返り、サービス品質の向上に取り組みました。

695_5.jpgエネルギーソリューション事業本部 創発戦略部
左:神林祥子・右:内藤慎次

こうした取り組みの結果、今では多くの方から共感をいただき、現在1.5万人を超えるユーザーに参加いただいています。「組織を変え、今までオムロン視点だったサービスの運営をユーザー視点に変えてからは、サービスへの共感が高まりました」と神林は言います。ユーザーへの想い、チームの変化が、サービスへの大きな共感につながりました。

そして、2023年8月現在、サービス開始3年間で太陽光発電の自家消費量36GWhの環境価値収集を目指した目標は1年半ですでに25GWhに到達し、CO2排出量に換算して11,000t-CO2の効果を生んでおり、これは杉の木・約125万本が年間吸収するCO2量に相当します。この環境価値は、オムロンが長期ビジョンで掲げるオムロンの国内75拠点の脱炭素化にも貢献しています。2022年度には、各拠点での創エネ・省エネを加え、このサービスで生まれたクレジットを活用したカーボンオフセットにより、5つの拠点がカーボンゼロを実現しました。

695_4.jpgサービス申込件数推移(累計)

 

サークルを広げて社会を動かす大きな原動力に

この瞬間もOSSが社会に届けてきた蓄電システム一つ一つから環境貢献への価値が生まれています。ユーザー自身が家庭で発電し消費した電力やポイントなどを把握する現在の機能に加え、今後はさらにユーザー同士の共感を高めるための機能を盛り込むなど、サービスの向上に取り組んでいきたいと考えています。オムロンとユーザー、ユーザー同士がコミュニケーションを図り、環境への意識を高めることでカーボンニュートラル実現へのサイクルを、より早くより大きく回すサービスへと進化させていきます。内藤と神林はサービスの進化に向け、その意気込みを語ります。「サービスはまだ始まったばかりです。オムロンとユーザー、ユーザーとユーザーがつながり合い、社会を動かす大きな原動力にしたいと思っています(内藤)」。「この輪をもっと多くの人たちに広げたいと考えています。そのためにはオムロンだけでなく、様々なパートナーとの共創も必要です(神林)」。カーボンニュートラル実現に向けたみんなの輪は、今も広がり続けています。

オムロンは、長期ビジョン「Shaping the Future 2030」のなかで、事業を通じて解決するべき3つの社会的課題「カーボンニュートラルの実現」、「デジタル化社会の実現」、「健康寿命の延伸」を設定し、その課題解決に取り組んでいます。「みんなでつくるエコ活サークル」は、カーボンニュートラルの実現に向けた新たな価値創出のサービスです。OSSは、サービスを通じてカーボンニュートラル・脱炭素を推進する企業として社会的責任を果たし、持続可能な社会づくりに貢献していきます。

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